緑内障についてのQ&A
症状について
Q |
どうして緑内障になるのですか? |
目の前半分で血液の役割を果たすのが、房水という透明な液体です。房水は眼球内で作られ、水晶体と角膜内面などに栄養を与えたのち、排水管から目の外の血管に向かって排出されます。この排出機能がなんらかの原因で悪くなり、房水が目の中にたまりすぎると眼球内の圧力が高くなり、視神経を圧迫して傷つけ、視野が狭くなったり、視力が落ちたりするのです。障害を受けた視神経は再生することはありません。失われた視野や視力は回復しないのです。緑内障は早期発見・早期治療が大切といわれるのはそのためです。 |
Q |
なぜ多くの人が緑内障に気づかず、未治療なのですか? |
頻度の高い慢性の緑内障は目の痛み、かすみ等の症状がなく、非常にゆっくりと進む場合が多いので気づきにくい上、片眼に緑内障が発生しても反対の正常な眼でカバーしてしまうので、視野が大きく欠けるまで自覚しません。したがって、定期的な検査を受けるようにし、症状が軽いうちに発見して治療することが大切なのです。 |
Q |
なぜ眼圧が上がるのですか? |
目には一定の固さがあります。これは、眼球内を房水が絶えず循環していて、目の固さをちょうどほどよい状態に保っているからです。眼球をボールにたとえると、房水は空気の働きをしています。正常な眼球はしぼむことなく、またパンクすることもなく、一定の固さに保たれたテニスボールのようなものです。そして、遠近のピント合わせを調節する毛様体は、房水を分泌するところです。ここから出た房水は、角膜と虹彩(茶目)のつけ根のすき間にあるスポンジ様の組織を抜けて目の外へ出ていきます。このスポンジの網目がなんらかの原因で詰まってしまったり、すき間自体が茶目でふさがると房水の排出が滞り、目は空気をパンパンにいれたボールのように固くなる、すなわち眼圧が上がるのです。 |
Q |
眼圧が高くなるとどうなるのですか? |
目の奥には、視神経乳頭と呼ばれる、細い全視神経線維が百数十万本集まって束になっているところがあります。緑内障になると眼圧が高くなり、視神経線維が圧迫されてその数が減り、視神経乳頭のへこみが拡大します。また、正常眼圧緑内障では、もともと視神経が弱っているために正常な眼圧によっても障害を受けてしまうと考えられています。眼底の異常は、一般に視野の異常よりも早くあらわれるので、緑内障の早期診断のためにも眼底検査が必要とされています。 |
Q |
視神経が圧迫されるとどうなりますか? |
緑内障初期には、視野がやや狭くなったり、視野の中で部分的に感度が低下して、進行につれて全く見えない部分(暗点)ができてきます。この暗点は、初期には視力に影響はなく、気がつかない人がほとんどです。しかし、暗点が大きくなって周辺をおおうようになると、周辺部は全く見えなくなり、中心を残すのみとなって、風景はまるで筒を通してのぞいているように狭くなります。視野の狭まりや暗点の進行とともに、しだいに視力も低下して、失明にいたることも少なくありません。このような視野の障害は、元には戻りません。できるだけ暗点の小さいうちに治療を始めることが必要です。 |
Q |
緑内障になりやすい人は、どんな人ですか? |
正常眼圧緑内障を含む開放隅角緑内障は、男女比では女性のほうが多いといえます。そして発病には関係ありませんが、近視の人が緑内障になったときには、そうでない人より進行が早いということもわかっています。また、家族歴も危険因子の一つで、家族に緑内障の方がいるときは早めに検査を受けることをおすすめします。 閉塞隅角緑内障の場合は、圧倒的に女性が多く、それも60代以上の高齢の方、そして遠視の方がなりやすいといえます。やはり検査を積極的に受けていただきたいですし、急性の症状が起きたときには直ちに治療を受けましょう。 |
Q |
閉塞型緑内障のメカニズムと症状は? |
緑内障を発症メカニズムで分けると、大きく2つのタイプがあります。その1つが閉塞型です。正常な眼では角膜と水晶体の間にある房水[ぼうすい]という液体が、絶えず生成され、排出されており、そのバランスから圧力が保たれています。『閉塞型の緑内障』(閉塞隅角緑内障)は、房水の排出口がふさがれて、房水が貯まり眼圧が上がり、視神経を圧迫し、視野や視力に異常が起こります。閉塞型の緑内障は、房水の排出口が軽く閉じたり開いたりすることを繰り返し、症状がおさまったり悪化したりします。そのうち排出口が慢性的に閉じた状態になり、眼圧が上昇した状態になります。しかし、このような慢性的な経過の一方で、急性発作を起こすものもあります。房水の排出口が急にふさがり、眼圧が上昇します。急に目が痛くなり充血し、視界はかすみ頭痛や吐き気もしてきます。ひどい場合には、放置すると失明してしまうこともあります。このような急性発作の方の場合、過去にときどき目が痛んだり視界がかすむといった一過性の症状の起きたことのある方も少なくありません。早めに眼科医の診察を受けることが必要です。 |
Q |
開放型緑内障のメカニズムと症状は? |
緑内障は、角膜と水晶体の間にある房水が、うまく排出されないと起こりますが、排出口は開いているのにその奥の排水管が目詰まりし、眼圧が上昇し、慢性的に視神経が圧迫されます。排出口が開いているので『開放型の緑内障』(開放隅角緑内障)といいます。 |
検査について
Q |
健康診断で毎年、眼圧検査と眼底カメラの検査も受けています。ほかの検査は必要ありませんか? |
緑内障の早期発見のためには眼圧検査だけでは不十分です。日本人に多い正常眼圧緑内障を発見するためには、少なくとも眼底検査は欠かせません。そして眼底検査は必ず両眼とも受けるようにします。緑内障は両方の眼に起こる場合が多いのですが、進行の度合いは異なりますので、片方の目の検査だけでは見逃すおそれがあるからです。両眼の検診を受けるようにします。 また、健康診断の内容にもよりますが、一般的な健診の眼底検査は緑内障の発見を目的としないことがほとんどですから、高血圧による網膜の出血などの発見には役立ちますが、視神経の観察には十分ではありません。緑内障発見のためには、眼科医による検診をおすすめします。 |
緑内障の治療
Q |
手術は痛いですか? |
適した麻酔法を選択しますから、通常は痛いことはありません。 |
Q |
手術は入院が必要ですか? |
単純な手術であれば日帰りも可能ですが、緑内障手術は単純なものから込み入ったものまで幅があり、一般に込み入った手術であるほど入院の必要性が増します。入院期間は通常1~3週間です。 |
手術後について
Q |
手術後の合併症はありますか? |
前房出血や、眼圧が安定しない状態が続いたり、白内障の進行、感染症、網膜剥離などがまれに起こりうる場合があります。 |
Q |
緑内障手術をしたあとに、将来もう1度緑内障手術をすることがありますか? |
一部の患者さんは、将来に緑内障手術を再びすることがあります。たとえば、緑内障手術をして数年間は眼圧が下降していたのに、また上昇してきたような場合です。それは、手術による傷が治ってきて手術で作った新しい出口が塞がって来たためという説明も成り立つので、ある意味ではやむを得ない面もあります。そこで、長期に眼圧の下降効果を持続させるために1回目の緑内障手術でできるだけ眼圧を下げておきたいのですが、そのような効果の強い手術ほど一般に手術直後の合併症が多いなどの欠点があります。緑内障の手術をするのを患者さんがためらっている間に、いつのまにか緑内障が進行増悪してしまう場合があります。 |
その他
Q |
緑内障の予防はどうすればいいのですか? |
緑内障は遺伝的な要素に加え、加齢、喫煙、自律神経失調、糖尿病、高血圧、近視などの要因が加わって起こるといわれます。初期には症状がないので、生活習慣やストレスに気をつけるとともに、定期的に眼底、眼圧、視野などの検査を受けて早期発見に努めることが大切です。 また、長時間うつむいたままの仕事、ネクタイで首を強く締め続ける人、大量のカフェインを摂取する人、抗うつ剤の服用も眼圧を高めるので、注意が必要です。 |
Q |
眼圧が高くない緑内障もあるそうですが? |
眼圧が上昇していないにもかかわらず、視野が欠けていくタイプを「正常眼圧緑内障」と呼びます。何らかの原因で視神経がダメージを受けやすい状態となっているため、正常眼圧でも障害されてしまうのです。まれに頭が重い、肩が凝るといった症状を感じることもありますが、自覚症状がない場合がほとんどです。最も確実なチェックは視野の検査です。両眼で見ているかぎり視野は補われるので、意識してチェックしても視野の欠損はわかり辛いので、眼科での検診をおすすめします。 |
Q |
緑内障の治療を受けながら、日常生活での注意や心構えは? |
緑内障は、放っておくと病状が進行するので、それを止めるためには、処方された薬を正しく服用し続けることと、定期的に検査を受けることが大変重要です。治療薬で異常を感じたときは、すぐ医師に相談してください。特に、他の病気(高血圧、糖尿病など)で通院している人や、薬をもらっている人は、必ず眼科医にその旨を伝えて下さい。緑内障では日常生活での制限は特にありませんが、過剰な興奮やえり元のきつい洋服の着用、大量の水分(1リットルくらい)を一度に飲んだり、長時間うつむいて仕事をする等、眼圧が上がることがあるといわれていますので、これらのことを一応の目安にして、あまり神経質にならずに「緑内障とうまくつきあっていく」ことが大切です。 |
Q |
緑内障になると必ず失明してしまうのでしょうか? |
答えはノーです。たしかに緑内障は、糖尿病網膜症に次いで日本人の失明原因の第2位の病気ですが、早めに気づいて治療をしていれば失明しないで済ます。しかし慢性の緑内障は自覚症状が少なく、知らないうちに進行しています。失明を防ぐには早期発見、早期治療が第一で、そのためにも定期的な検査は欠かせません。 |
Q |
緑内障は治療・手術したら治りますか? |
一度消失した視神経は元に戻ることはありません。つまり緑内障は完治するということはないわけです。しかし、近年は治療薬の開発や治療技術の発達によって、進行を食い止めることができるようになりました。早期発見、早期治療。そして主治医の指示に従って経過を見守れば、日常生活に支障をきたすことなく、生涯を過ごすことができます。 |
Q |
緑内障の人はどれくらいいるの? |
日本眼科医会の緑内障疫学調査共同研究によると、緑内障と診断された人は全体の3.56%、我が国の40歳以上の約30人に1人にあたります。これからみると推定の患者数は約200万人にものぼります。けっして珍しい病気ではありません。 |
Q |
緑内障の人で通院している人はどれくらい? |
現在、実際に診断と治療を受けている人は緑内障人口の約20%で、残りの80%の人は治療を受けていません。緑内障の場合、悪化してしまってから眼科医に行くのでは遅いのです。あなた自身の大切な目です。ぜひ、定期的な目の定期検査(年1~2回)を受けることをおすすめします。 |